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編集長インタビュー
 
 
 
 
日中は科学研究で積極的な連携を
野依良治 名古屋大学特別教授、科学技術振興機構研究開発戦略センター長
2019/06/03 14:04:17  文/本誌編集長 蒋豊
 
 

日本は生命科学、環境問題など、多くの分野でリーダーを輩出し、ノーベル賞受賞者も毎年のように出している。デジタル革命あるいは第4次産業革命と言われるイノベーションの時代を迎えて、これからの科学研究者の使命とは何か、どのような科学研究のあり方が求められているのかを、ノーベル化学賞受賞者である野依良治氏に語っていただいた。

 
撮影/本誌記者 張桐

ノーベル賞受賞の意味

—— 野依先生は2001年に化学賞を受賞されましたが、ノーベル賞受賞というのは、科学者、所属大学、ひいては国家にとって、どのような意味を持つのでしょうか。

野依 世界には多くの著名な賞があって、顕彰の趣旨はさまざまです。ノーベル賞は大変に名誉ある賞ですけれども、その1つにすぎません。ただ、ノーベル財団(1900年設立)は、1世紀を越えて、アルフレッド・ノーベルの遺言に忠実であるべく、たゆみない努力を続けてきました。その揺るぎない伝統が、科学の健全な発展を促してきたということは間違いありません。そして、受賞の機会は、国籍を問わず、また有力な大学や研究機関の研究者だけではなく、全ての人に開かれています。また、ノーベル財団では、時代の流行ではなく、独創的な発見や発明を特に評価しているように感じます。これはとても大事なことです。

したがって、国家の話が出ましたけれど、日本も含む多くの国で、報道メディアが大騒ぎをして、国威高揚のために受賞の数を競うことは、好ましくないと思います。確かに受賞者が続けて出るためには、国として一定水準の教育や研究環境を用意しなければなりません。しかし、過度に政治的に、あるいは経済的に圧力をかけると、必ず研究者の自由や研究社会の自律性、あるいは規範をゆがめることになります。ノーベル賞の科学3賞(生理学医学賞、物理学賞、化学賞)について、受賞の歴史を見てみますと、その時代の国力と一定の相関関係はありますが、確固たる因果関係は必ずしもありません。強い国力がなければノーベル賞の機会がないのかというと、そんなことは絶対にありません。

もう少し言いますと、科学研究には、最初に萌芽的なものがあり、それから成長し、そして花が咲いたり実がなるという段階があります。大学に求められる最も大事なことは、個人による研究の萌芽です。若い大学人は、ほかの人から与えられた課題を解決するのではなく、自分でいい問題をつくらねばなりません。そして、未知に挑んだ結果、失敗したとしても、そこに名誉を与えなければいけない。そういう風土というか土壌をつくることこそが国家の責任だと思います。

 

少子高齢化現象の科学技術界への影響

—— 日本は科学技術立国を掲げていますが、国の科学技術研究開発に関する予算は減少しています。日本の科学技術の課題は何だとお考えですか。

野依 研究の生産性は、量であれ、質的であれ、3つの要素が関係します。研究開発投資額、研究人材の投入量、それからイノベーション効果です。

ご承知のとおり、この20年間、日本では高等教育と科学技術の政府予算にほとんど伸びがありません。これでは、巨大な投資拡大を行う中国は例外としても、着実に支援を続けるアメリカや欧州などに拮抗できません。それとともに、資金配分の質が低い。特定の分野、組織、人に集中し過ぎる感じがしています。

2番目の要素である研究人材ですが、これは企業を中心として70万人近くいて、相当大きな数です。しかし、あまりに均質で、多様性に欠けるという問題があります。

近年の研究の生産性の低さは、個人の問題というよりも、主として最後のイノベーション効果の欠如の結果です。言い換えれば研究教育、システムが危機的状況にあることです。

その第1は、人材の量と質の問題です。社会のあらゆることに関することですが、現在の日本の最大の問題は少子高齢化です。これが科学技術界にも大きな影を落としています。18歳人口が、1992年には205万人でした。ところが2016年には118万人で、40%減になりました。科学の進歩は、間違いなく若い世代が担うわけですが、日本の大学では40歳未満の教員が全体の25%しかいません。中国では44%、ドイツは51%で、日本はあまりに少ないのです。しかもこの貴重な若い人たちが独立しておらず、いまだに年配の先生の指導のもとに研究をしている。この徒弟制度は非常に大きな問題です。若い優秀な人たちを育てて、独立させて、そして十分に力を振るってもらうことが大事です。

第2は、国際交流の不調です。グローバル化時代にもかかわらず、国際的な頭脳循環(brain circulation)がうまくいっていません。現在、アメリカの大学で毎年5000人以上の中国人が博士号を取っていますが、日本人は僅か170人くらいです。アメリカは多様な人種の集まりです。残念ながら日本は国際人脈が形成できず、諸外国との共同研究が十分に行われない状況にあります。

つまり、財政支援の格段の拡充を、ぜひ政府に求めるべきですが、国際水準の研究者がまったく足りません。ですから若手や女性、それから外国籍の人たちを、独立した研究者として登用する。そういったシステムの改革が早急に行われなければなりません。

 

—— 若手の人材育成について、どのように考えていらっしゃいますか。

野依 中国の「海亀政策」にならうべきです。同じところにとどまる研究者は成長し難い。いろんなところに行き、新たな体験をし、それを糧として発想がひらめくわけです。ノーベル賞を受けた人は、受賞時に平均して国内外の4.6機関を経験しています。山中伸弥先生は5カ所目で受賞されました。神戸大学、大阪市立大学、アメリカのUCSFグラッドストーン研究所、奈良先端科学技術大学院大学、そして京都大学です。昨年の受賞者の本庶佑先生は、京都大学出身ですが、アメリカのNIH(国立衛生研究所)に行き、帰国してから東京大学を経て、大阪大学の教授になり、そして京都大学に戻ってからの受賞です。

 

「共創」が求められる時代へ

—— 中国は今、新たな産業政策「中国製造2025」を発表し、次世代情報技術、人工知能やIoTなどを重点分野とした取り組みが世界からも注目されています。

野依 「中国製造2025」を日本語訳で拝見しました。「製造業は国民経済の基盤であり、国家存立の根本であり、国家振興の神器であり、強国になる基礎である。……世界の強国の興亡、中華民族の奮闘の歴史は、『強い製造業なしには国家と民族の繁栄もない』ことを物語っている」とあり、歴史と現状を俯瞰した上で、ものづくりの重要性を改めて強調しています。以下、具体的に戦略の方針と目標を設定して、戦略の任務と重点を定めています。要は、工業化と情報化の融合で、各省、自治区、各部委員会や直轄機構に対して、真剣に実行貫徹することを求めています。これを読んで私は、国民に伝える国家の意思が明確であることに強い感銘を受けました。

ただし、科学というものは、産業経済のためだけにあるのではありません。本来の科学、純正科学というのは、森羅万象に関わる真実の追究の営みであって、人々の真っ当な自然観や、人生観を培うためにあります。もちろん、その知識を利用してつくる科学技術は、当然社会性を帯びてきます。「中国製造2025」にあるような国の存立と繁栄にも関わってきます。しかし、究極的にはより広く人類文明の持続を目指さなければなりません。

大切なことは、科学技術は、現代の世代のためだけにあるのではないということです。将来の世代との公平性に対する配慮が絶対に必要です。環境問題だけでなくて、エネルギー、資源、さらに生物多様性といった深刻な問題をどう考えるのか、これらをまだ生まれていない世代、それからそのもっと先の後継世代ともよく議論しなければいけません。彼らが嫌がることは絶対やるべきではない。

巨大な中国が、これからどこを目指すのか。中国の方向性は、人類社会に決定的な影響を及ぼします。ぜひグローバルな観点から、全世界をいい方向に誘導していただきたいと思います。

 

—— 日本と中国の研究者による共同研究、共同開発について、先生はどう考えておられますか。

野依 今後の科学技術の大きな発展は、今までのような個別の分野の研究ではなくて、分野の連携、あるいは融合によってもたらされると私は予想しています。これまで独創性が評価されてきましたが、これからはさらに「共創」が求められます。もちろん中国、アメリカ、日本も、それぞれにいい教育にむけて努力をしていますが、どうしても画一的なものになる。異なる教育の背景、研究経験を持つ人たちを相補的に集約して「共創」していくことは必然だと思います。

個人による独創は尊重されるべきだが、1人でできることは限られるということです。特に加速器の研究、宇宙天文学、ゲノムや生命科学のような大目標をかかげるビッグサイエンスは、もはや単独国家では不可能で、大規模な国際共同研究が当たり前になっています。中規模、小規模研究においても共同は非常に有効です。したがって、日中は互いに敬意と信頼を寄せ合って、少なくとも基礎研究のレベルについては、より積極的に協力連携すべきだろうと思います。

 

中国の英知の幅に敬意

—— 今年の6月末、習近平主席が11年ぶりに来日する予定です。野依先生は中国科学院の外国籍院士でもあり、習主席の来日にあたって思われること、また、中国科学院についてのアドバイスをお願いします。

野依 近代の科学技術を先導してきたのは、主に欧米諸国です。その結果、科学技術社会が、欧米先導の「英語の世紀」になっています。さらにこれからデジタル化が加わることによって、グローバルに価値観がさらに画一化、規格化して極端な英語モノカルチャーになることを憂慮しています。

これは大問題で、世界の知的な基盤を非常に脆弱化していきます。なぜなら、未来の世界は本当に不確実性に満ちたものだからで、モノカルチャーでは何かが起こればすべてが一気に崩壊します。科学に国境はありませんから、一応世界標準の体制をつくる必要がありますが、同時に、東洋の特質を生かした差異化をもって補完し、リスクに備えなければなりません。

それからもう1つ。科学や科学技術は、社会全体において相当に普遍的な意味をもちます。決して専門家、大学や企業などの組織、あるいは特定の国家だけのものではありません。ですから、多くの国民がいかにそれを理解し、支援し、さらに活動に参加するかが、未来の健全な社会の形成に寄与し、同時に国力の根源にもなるのです。安全・安心社会の基盤でもある。例えば、原子力利用の問題や生命技術、情報通信技術、人工知能などの社会実装の是非についても、一般人には分かりませんからすべて専門家にお任せしますということは無責任です。国民全体がそれらの意味を合理的に理解し、意思決定に参加することが国力の基盤をつくるのです。

この観点から、科学と言葉の関係、特に母語(mother tongue)がものすごく大事になります。科学の内容は母語で説明しないと、普通の人には分からないことが多いからです。私が中国に大変敬意を表するところは、現在、科学技術の情報のおそらく90%以上が英語を経て伝わっているにもかかわらず、全ての専門的術語を中国語に翻訳し、一般社会で使っていることです。これはすごいことで、中国人全体として、科学技術を英語でも中国語でも考えている。一方、英米人はほぼ英語でしか考えられない。中国の英知の幅は、英米に比べて圧倒的に広いと思います。

最後に1つ提案をします。中国、日本、韓国を中心とした漢字圏の科学技術振興です。文字の国・中国の方の指導を仰ぎつつ、まず共通の漢字の術語、専門用語の辞典をつくって、この一般社会への浸透を図ってはどうでしょうか。この共同作業をきっかけに、科学技術を越えて、アジア諸国のさらなる相互理解が深まると思うのです。■

 
  情報元:人民日報海外版日本月刊  
 
 
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