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編集長インタビュー
 
 
 
 
藤井 隆太 株式会社龍角散代表取締役社長
ビジネスは異文化に融けこむ覚悟で
2019/04/23 19:48:20  文/本誌編集長 蒋豊
 
 

龍角散は、いまや中国では「日本の神薬」のひとつだ。明治4(1871)年に東京神田で創業した同社は、そのルーツを江戸時代中期の秋田藩にまでさかのぼることができる。その歴史もさることながら、のど専門に特化した「オンリーワン戦略」を展開するなかで、新たな商品開発とCMで国内人気も上昇中だ。同社を率いる社長でプロのフルート奏者でもある藤井隆太氏に、独自の経営哲学を語っていただいた。


撮影/本誌記者 原田繁

ルーツは江戸時代

—— 「ゴホン!といえば」で知られる龍角散は日本人に広く認知されているトップ商品です。社名にもなっている「龍角散」の名前の由来は何ですか。中国と何か縁がありますか。

藤井 私の先祖は江戸時代、秋田藩佐竹氏に仕えた御典医でした。藩には喘息で苦しむ殿様のための秘伝薬がありましたが、それを改良してつくったのが「龍角散」だと言われています。

名前の由来ですが、「龍」は、龍脳とか龍骨とかいう成分が入っていますので、その「龍」を使ったようです。「角」というのは鹿角(ろっかく)からです。鹿角の周りに生えている苔のようなものを「鹿角霜(ろっかくそう)」と言いますが、強壮作用があります。咳をすると体力が落ちますから、そういう強壮成分を入れたようです。「散」というのは散剤(粉薬)です。生薬の原料はもともと中国から来たものが多いですから、そういった意味では中国と関係はあります。

先祖はどうも長崎まで行って勉強したようです。ですから和漢の技術プラス蘭学ですね。1790年代のことだと思いますが、華岡青洲(1760-1835)のお弟子さんのもとに私の先祖が行ったという記録も残っています。秋田県公文書館には、そういった古文書が保存してあります。

当時は秋田の久保田城(佐竹氏の居城)の中に薬草園があって、そこでカンゾウとかキキョウなどの生薬を栽培して、それらを配合していたようです。中国でいう漢方とも、日本で一般に使われている漢方とも少し違います。生薬の組み合わせを漢方というなら、われわれの龍角散も漢方になりますが、日本の基準では漢方ではなくて「生薬製剤」です。

—— 世界で初めて開発された「服薬ゼリー」は、「のどを守る」新しい製品として高い評価を得ていますが、業界における御社の強みは何ですか。

藤井 当社はのどの専門メーカーですから、のどに関する専門性が高いということです。逆にいうと、ほかのカテゴリーには拡大をしないということです。のどに特化する「オンリーワン」を大切にしています。

もう1つ、当社は非上場ですから、社外の株主の影響を受けることがありません。ということは、かなり長期的な戦略に立って事業運営ができますし、長期的な投資ができます。服薬ゼリーは、つくってから20年ぐらいたちますが、おそらく上場企業ではできなかったことだと思います。売り上げからすれば、全体の1割もありませんが、イメージはものすごく強いです。実際に、お薬を飲めないという方が、たくさんいらっしゃいます。これこそが企業としての存在意義であり、他社ができないことを当社ができるんだということが非常に重要で、そこが当社の強みだと思います。

インバウンド消費には早くから対応

—— 龍角散は中国のサイトでも「日本で買うべき神薬」に挙げられ、訪日中国人による“爆買い”の対象にもなりました。御社のインバウンド戦略の取り組み状況について教えてください。

藤井 2010年頃、日本政府が中国人に対するビザの発給要件を緩和しましたが、それを私はすごいビジネスチャンスだと思いました。日本家庭薬協会という団体があり――太田胃散とか救心とか浅田飴とか――皆さん仲間で、一緒に活動しています。当時はまだインバウンドという言葉は定着していませんでしたが、海外からたくさんの観光客が来るはずだから、そういう人たちに売り込むことができないかと悩みました。それで、一緒に戦略を立てまして、私が提案して始めたのが「暢遊日本」という冊子に共同広告を出すことでした。観光客はビザを発給するときに旅行代理店に行き、この冊子を手に取ります。もちろん空港にも置いてあります。これをかなり早い時期からやっています。

それから、せっかく大勢の方が来てくださるんだから、タックスフリー(免税)にしたらどうかと提案しました。秋葉原のラオックスなど、2010年頃は全国に100店舗ぐらい免税店がありました。そこの店頭にディスプレーを設置し、中国語でPOP広告を書いて、冊子広告に掲載している商品を並べました。すると観光客は団体で回りますから、集中的に買ってくれました。

さらに、せっかく購入していただいた商品を、中国の方に安全に使っていただけるようにと、いろいろ考え、当社のスタッフが提案して、HMAJ(日本家庭薬協会)のウィチャット公式アカウントを業界全体で制作しました。ここには、各社の売れ筋製品の説明が全部中国語で書いてあります。


撮影/本誌記者 原田繁

異文化に融けこむ覚悟で

—— 近年では、中国を筆頭に世界中でECビジネスが盛んですが、今後の中国ビジネスへの展望をお聞かせください。

藤井 家庭用医薬品は、生活の一部です。しかし、海外ではライフスタイル、習慣、宗教、要するに文化が違います。確かに日本の製品は優れています。でも、「良い」から使ってくれというのは間違いだと思います。「良い」けれども、それはそちらの生活に合っていますか、理解していただけますかと、そういう努力をしないといけません。そうした努力を当社では海外で50年以上続けてきました。今では見事にそれぞれの国の生活の一部になっています。今まさに中国でもそうなりつつあります。

ただ、中国でのビジネスは難しいことは難しいです。医薬品の海外展開というのは、非常に長期間に及びますし、コストもかかります。せっかく投資をしても、突然国の法律が変わって、市場に参入できなくなったら意味がありません。ですから一時期、中国ビジネスから撤退することを考えたこともあります。

ところがその思いが変わったのは、「良い製品だから欲しい」という流れに中国がなってきたことです。マーケティングの原則では、要るかどうか分からないけど、無理やり押し付けて「いかがですか?」と言っても、買ってくれません。向こうから「欲しいから持ってきてくれ」となってから行った方が、ずっと早い。ですから、われわれから見ると、インバウンド戦略は、長期的に考えると、非常に効率のいいサンプリング戦略なんです。

今の中国を見ますと、一気にIT化、キャッシュレスが進み、日本とは別次元で、すごい勢いで近代化が進んでいます。非常に合理的です。法律が急に変わるというのも、そういう前提があることを認識したうえで付き合っていけばいいと思います。

音楽とビジネスに共通する感性

—— 企業経営はよくオーケストラに例えられます。社長はプロのフルート奏者として今も活躍されていますが、その経験をビジネスにどう生かしていますか。

藤井 音楽家をやっていて、よく経営もできますねと言われますが、当たり前のことなんです。なぜなら音楽もビジネスですから。プロの演奏家は、譜面をきちんと分析して、正確に音が出るようにトレーニングしなければいけません。これには、感性のかけらも必要ありません。デジタルの感覚です。論理の思考です。それから、演奏会があれば、どういうスケジュールで、どういうふうにトレーニングをするか、その期日までに演奏技術を引き上げるということも、ビジネスなんです。これはわれわれの今の仕事と全く変わりません。

しかし、大事なのはそこからです。ただ単に音を出しただけでは、演奏とは言えません。本当に大事なのは、譜面に書いていないことなんです。作曲者が何を考えてこの曲を書いたのか。そしてわれわれプレイヤーは、現代の人にどういうふうに聞かせたら、その作曲者の意図を伝えられるかということを十分に考えて演奏します。演奏すると反応があります。それは聴衆との対話です。計算ではありません。これこそ感性なんです。そういうことが分かっていないと、まともな演奏にはなりません。

学生のときの私は一生懸命譜面を見て演奏していただけでした。フランスに留学して、ものすごく怒られたんです。「君の音楽は何だか分からない。何をやりたいのか、考えて来なさい」と。落ち込みましたが、大事なのはそこなんです。自分はどういう音楽をやりたいのか。自分の人生観を、音楽を通してどうやってアピールするのかということがプロの演奏家にとって一番大事な仕事なんです。

一方、われわれの仕事はどうか。ほとんどの仕事は論理の世界です。ですが、最後の一番大事な判断をする部分は、全部デジタルで、論理的な思考で判断できるのか。決してそうとも言えません。それを判断するのはやはり感性なんです。もう1つ大事なことは、オーケストラの組織論です。私がなぜ社員を100人以上にしないかというと、それ以上多くなると、顔が見えなくなるからです。オーケストラの100人という人数は、指揮者が全員を見ることができるのです。

—— 社長は社員全員と、直接対話したことはありますか。

藤井 今、そういう仕事「しか」していません。会議も行いますが、どんなに会話しても、言語能力には限りがあります。必ずずれが生じたり、独自の色がついたり、時間がずれたりします。それでは意味がありません。もっと恐いのは、われわれ経営者が欲しい情報が的確に手に入るかどうかです。まずあり得ません。ですから私はできるだけ工場や、海外でも現場に行きます。そうすることで、誰よりも早く新しいビジネスができるんです。

 
  情報元:人民日報海外版日本月刊  
 
 
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