× CLOSE
   
中国語 | 日本語 | お気に入り追加
検索  
 
人民日報海外版
 
 
 
 
「デイゴの花は咲いただろうか?」
2018/08/24 12:31:41  文/日本泉州商会  林俏陽
 
 

「東アジアの文化の都」泉州(中国福建省)からこの地にやって来て、長い年月が流れた。家々の庭には様々な植物が植えられ、花園のような美しさだ。生命の栄枯に四季の移ろいを感じ、淡い香りに包まれてその美しさを歌う。そんな暖かな家庭を目にする度に、夢の中の故郷を想い起こしては、どれほどその暖かい懐に帰りたいと思っただろう。


泉州の「双塔」(撮影/泉州晩報契約カメラマン 陳世哲)

留学したての頃、四方を奔走しながら苦学した。桜の花の儚い命を愛でる時間もなく、月を眺めて無常を感じる暇もなかった。仕事を終えて終電に乗ると、いつも車窓の外に通り過ぎていく家々の灯りを見ては故郷を想った。遠い過去のようでもあり、最近のことのようにも感じる。故郷の薄暗い灯りは、どんなに遅い時間も、いつも窓辺で揺らめき、道端に咲く真紅のデイゴ(刺桐)の花と競い合っていた。

泉州にはデイゴの花と温かい家庭があった。多くのつぼみが枝先に立ち並ぶ姿は、まるで熟した赤い唐辛子のように目を引いた。そして、浸みわたるような花の香りに、泉州の名物料理の美味しそうなにおいが入り混じり、濃厚な文化の息吹に満ちた古都に漂う。柔らかくてコクのある「牛肉羹」、つややかで油っこくない肉ちまき、パリパリ芳しい「鶏巻」、もちもちでスパイシーな「洪瀬鶏爪」、甘くしっとりした「潤餅」、口に入れるとすぐに溶ける「麺線糊」、シャキシャキと歯切れのよい「石花膏」、甘くて新鮮な「土筍凍」、清涼で解毒作用のある「四果湯」。

故郷を離れて久しいが、祖母が作ってくれた甘く滑らかな泉州鹵麺を忘れることはできない。

祖母は優しく穏やかで親しみのある人だった。風雪を耐えてきた顔には、古道に生えるガジュマル(榕樹)のような深い皺が刻まれ、まるで古都の千年の歴史をも刻んでいるかのようだった。いつもはよぼよぼと足元もおぼつかない祖母であったが、孫がお腹が空いたと聞けば、人が変わったように軽やかな足取りで台所に入り、丸まった小さくか細い体はせわしなく動き始めた。


清源山--老子像(撮影/呉寿民)

鉄鍋に、予め作っておいた白湯スープを入れ、特別に用意したシイタケ、干し貝柱、沙虫、エビ、イカ、豚肉、タケノコ、黄花菜、ニラ、もやしと、胡椒、サテソース、ニンニク等の調味料を入れる。さらに、タピオカ粉を加えると、麺はもちもちしてスープは濃厚になる。他にも多くの副菜が並べられ、大いに食欲をそそられた。

祖母はカサカサの手で、湯気が上がるお碗をテーブルに運び、孫が熱々の鹵麺を箸で持ち上げるのを見ると、無情な歳月によって刻まれた皺だらけの顔には、菊の花のような笑顔が咲き、混濁した二つの目には、わずかに光が広がったように見えた。

夜になると、故郷を想い幾度も涙した。故郷を想うほどに問わずにはいられなかった。故郷のデイゴの花は咲いただろうか? 真っ直ぐ立つ豊かな花弁は、今も、梢に高く吊るされたいくつもの赤い提灯が旅人の帰途を照らすが如くあるだろうか?

学校を卒業して就職すると、冬の朝はいつも、肌を刺すような冷たい風に向かい、震えながら物寂しい通りを歩き、時間通りに出社した。空はぼんやりと薄暗く、湿った朝霧に道端の草花はぐったりしていた。

通りの樹木の枯れ枝を見ると、故郷のデイゴの花を想い出した。春や夏には、大雨の後にひっそりと咲く様子は春の夢のように美しく、霧雨に濡れても風が吹いても消えない激しい情熱のようであった。かくして、この東洋の美しい古都の街角にも、老子の石像が建つ清源山にも、「前夜、春風が吹いてきたかの如く」至るところでデイゴの花は咲き、それは、赤トンボが春風に揺れ動いているようだった。

うららかな陽光が石畳に注ぎ、美しく艶やかなデイゴの花を照らす。開元寺の東西塔の下には、千年の歴史を突き抜けたような、縦横に交錯する大通りと狭い路地が広がる。閩南地方名物の赤レンガ、西洋建築の番仔楼、厳かな清真寺、壮麗な天主堂、参拝者で賑わう天后宮。ここでは異国情緒漂う建築物が融合し、海辺の古都の時空には、様々な宗教と古くからの儒家思想が合流する。


世界無形文化遺産、中国音楽の生きた化石:南音(撮影/呉寿民)

故郷のデイゴの花は燃える炎のようであった。白雲を燃やして紅霞に変えるが如く人々を奮い立たせる。泉州の若者は決して挫けない。故郷を離れ他郷にあっても、如何なる困難にも屈しない。それは、故郷の人びとをもっと幸せにしたいという願いがあるからだ。

泉州人には命がけで勝ち取るという精神がある。泉州市恵安県の南東部の沿海地域に崇武、山霞、浄峰、小岞という四つの鎮がある。そこに住む女性たちはそれを体現している。現地の男たちは出稼ぎや漁に出るため、女たちは家事以外の力仕事も細かい仕事も何でもこなし、働き者として知られる。

彼女たちは、頭にはビロードやプラスチックの美しい造花をつけた黄斗笠をかぶり、白地に花柄のスカーフで頬と顎を覆い、短く細いブラウスを着て腹部は露出している。腰には銀のアクセサリーを提げ、幅広で上品な股上の浅い黒いズボンを穿き、その出で立ちは伝統的な地方の色彩に富んでいる。恵安の女たちの落ち着いた純朴な気質と服飾の艶やかさには、ギャップがありながらも、そのふたつが結び付き、妖艶とは異なる美しさが独特の風情を生んでいる。それはデイゴの花の美しさを想わせる。

朦朧詩人舒婷は、『恵安女子』に恵安の女たちの独特の服飾と結婚の風習を描いて、国内外に知られた。彼女たちは、表紙や挿し絵の中で、美しい風景となり伝説となった。さらに、泉州人の勤勉で勇敢な闘争精神も世界に知られるところとなった。


名城の夜(撮影/陳鯉)

歳月は移りゆく。世の中を知らなかった若者が、終には異郷の地で自分にしかできないことをやっている。奮闘の日々が、故郷への想いを薄れさせることはなく、無情な歳月が愛国心を忘れさせることもなかった。夏の重苦しい夜、白銀のような柔らかな月の光が、雑草が一面に生い茂った小山の山肌に降り注ぐ。飛び交うホタルと満天の無数の星が競い合うように煌めく。さわやかな夜風が湖面に穏やかな波をつくり、岸辺の木の葉を優しく揺らし、美しく柔らかなメロディーを奏でる。そして、故郷の古典音楽南音のような美しい調べはいつまでも続く。

文化と歴史の古都泉州。孔子廟、文化宮、茶館。アンティークのテーブルで、のどごしの甘いハーブティーを飲みながら、美しく味わいのある南音(泉州市一帯の室内音楽、歌謡)に耳を傾けると、宮廷の美しい調べと濃厚な郷土の息づかいが織り成す抒情的で悠遠な旋律は、何度も繰り返される。

デイゴの花が一面に咲く泉州。南音が響き渡る古都に、デイゴの花は今年も咲いただろうか?

デイゴの花は泉州に新たな生命力をもたらす。泉州のまちは日進月歩で発展を続ける。高層ビルが林立し、交通が発達し、交通量が増え、繁栄と賑わいを見せる。「一帯一路」建設の進展に伴い、かつて海上シルクロードの起点であった古都は、中国文化と西洋文化の合流という意義から、再び経済発展の潮流を迎え、旺盛な生命力を湧き出だす。中華民族の偉大な復興というチャイナドリームが、今再び出航し、新たな時代を拓く!

 
  情報元:人民日報海外版日本月刊  
 
 
学校 IT 不動産業 飲食業 旅行業 法務·行政 金融
運輸業 通信業 人材派遣紹介 医療·健康 建設業 娯楽業 その他業種
 リンク集: 新华网中国网新浪网光明网大公网文新传媒侨报网欧浪网欧洲华人在线
 
会社紹介 | 事業紹介 | 広告サービス | 印刷サービス | 『人民日報海外版日本月刊』購読申込 | お問い合わせ | 情報守秘義務 | 著作権と免責事項
 
 
(株)日本新華僑通信社
 
住所:171-0021 東京都豊島区西池袋5-17-12 創業新幹線ビル4F
電話:代表 03-3980-6635 編集部 03-3980-6641 営業部 03-3980-6695
Copyright © 2004 JNOC, All Rights Reserved