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編集長インタビュー
 
 
 
 
向 安全 中国・科学出版社東京株式会社編集長
日本市場を開拓する中国出版業界のパイオニア
2017/12/22 18:10:07  文/本誌記者 蒋豊
 
 

「親望親好、隣望隣好」(親戚や隣人は常にお互いに関心を寄せ相手の幸せを願うものだ)――これは中国が提唱する協力互恵を旨とする新たな国際関係理論であり、中国の伝統文化に根差す核心的思想である。海外市場で中国を語り、中国を世界に発信することは、中国文化産業の長年の夢であり目標であった。2009年7月に設立された科学出版社東京株式会社は、中国大陸の出版社とし初めて日本に支社をもった先駆者である。周知のように、日本の出版業界は販売チャネルが閉鎖的で出版社間の競争が熾烈なため、海外の出版社にとって「立入禁止区域」とされてきた。では、科学出版社東京株式会社は如何にしてその局面を打開し、日本市場に踏み出したのだろうか。先ごろ、科学出版社東京株式会社を訪ね、向安全編集長を取材した。

 

図書出版に求められるローカライゼーション

—— 御社は中国の国営出版社として初めて日本市場に進出し、2009年7月に支社を設立されました。2009年から今日まで、科学出版社東京株式会社は如何にして日本市場を開拓し、存在感を高めてこられたのでしょうか。

向安全 一言で言いますと、日本で日本語の書籍を出版するにあたっては、ローカライゼーションが求められるということです。具体的に五点挙げたいと思います。

第一に、書籍の選択にあたっては、現地の読者のニーズを考えるということです。我々が出版するのはすべて中国の著名な専門家や学者による著作です。厳密なデータ分析に裏打ちされた客観性と正確さが保証されています。

第二に、翻訳者のローカライゼーションです。翻訳者は中国語を理解し専門のバックグラウンドと知識をもつ日本人が理想です。正確な翻訳と自然で流麗な言語が保証されます。

第三に、編集者のローカライゼーションです。自社で編集スタッフを雇うのは負担が大きいため、フリーランスの方にお願いしています。日本にはフリーランスの編集者が多く、非常に仕事熱心です。校正者は中国語を理解できなくても構いません。中国語のできる校正者は査読の際、無意識に中国語に引っ張られてぎこちない文章になり、不自然な日本語を見落としてしまうからです。従って我々は通常、中国語のできない方にお願いしています。その方が、翻訳した原稿を読んで理解できなかったり日本語の表現が不十分だと感じた場合、直ちに翻訳者とコミュニケーションをとり解決することができるのです。

第四に、デザイン、レイアウトを当地で行うことです。現在弊社ではモノクロと判型の小さな書籍は日本で印刷し、サイズの大きなシリーズものやカラー 写真を多用した書籍は、印刷代を安く上げるため中国国内で印刷することがあります。書籍毎に中日で比較を行い、紙代、印刷代、関税、運搬費の合計が20%~30%安い場合は中国国内で印刷します。

最後は流通チャネルのローカライゼーションです。これが最も重要な部分です。日本の主な販売チャネル以外に、我々は図書館のチャネルと専門図書のチャネルを重視しています。弊社は学術書を多く扱っているため、専門のチャネルを有効的に利用することで影響力を高めていくことができます。

 

5000冊が大きな教訓に

—— 日本市場参入後、ご苦労も多かったと思います。印象深い出来事があれば教えていただけますか。

向安全 2009年に日本に会社を設立しましたが、当時日本の書籍出版市場は縮小傾向にありました。弊社が最初に出した日本語書籍は『曹操墓の真相』でしたが、日本語版の出版を考慮しながら中国語版の編纂計画にあたりました。日本人は写真を併用した書籍を好みます。例えば「洛陽鏟」にしても、多くの人がどんなものか知りません。すべてに写真を配置するよう指示しました。中国語版の売れ行きが好調だったため、すぐに日本語版の制作に着手しました。

日本市場に参入したばかりでしたので翻訳者を探すのに苦労し、協力会社に探していただきました。翻訳が終わってから、編集印刷は北京で行いました。結果的に、一冊目は杜撰なものになってしまいました。具体的に言いますと、先ずは装丁です。日本の販売店からは、ハードカバーとしては柔らか過ぎるとクレームがありました。二点目にブックマークリボンの不一致です。中国では幅の広いリボンを使用していますが、日本のものは細いのです。さらに、中国ではリボンは本の外に出ていますが、日本では本の中に隠れています。些細な事のようですが、日本の販売店は細部にまでこだわります。一冊目から成功を勝ち取るために、我々は中国国内で最高の印刷業者を探しました。国内で出版されている書籍よりもずっと質の良いものができたのですが、やはり日本では受け入れられなかったということです。

我々は致し方なく5000冊すべてを処分して、これを教訓とし、日本で印刷業者を探し印刷し直しました。印刷には1ミリの狂いも許されません。二度目は4000冊印刷し、現在、半分以上販売できています。これを大きな教訓として、その後書籍の出版に際しては日本市場の品質基準に照らしています。

 

日本の同業者の評価を勝ち得る

—— 御社は日本でここまで長く発展を続けてこられました。中国書籍の出版を通して、中日関係や相互理解にどのような役割を果たせるとお考えですか。具体的な事柄があればお聞かせください。

向安全 我々は書籍を出版する過程で、多くの日本の優秀な学者や翻訳者とお会いしてきました。いずれも専門分野ではトップクラスの方々です。

日本人は中国文化、特に中国の伝統文化を好みます。また、現代中国の真実の姿を多く紹介して欲しいという声も多く、この二つのニーズがあります。

専門家の弊社の出版書籍に対する見解として、主に二点が挙げられます。一点目に、弊社の書籍は日本の学者の書籍とは視点が大きく異なるということです。日本人はミクロな視点で書く傾向にあり、中国人はマクロな視点で書く傾向にあります。二点目は本の中身です。中国の書籍は伝統文化に関するものはすべて逸品です。日本で現在出版されているものと比較しても写真はかなり精巧です。また、双方の学者間の交流と理解を促進するために、一つの問題を異なる角度から論じた書籍が必要だとの認識もあります。これは現実的な問題です。

そのため弊社ではこれまで数回、学術交流活動も行ってきました。高尚全先生主編の『転換を模索する中国―改革こそが生き残る道』の発表会を行い、高先生にもお越しいただきました。同時に日本の経済学者も多くお招きして、50人の学術シンポジウムを開催しました。中日の学者が一同に会して一つの話題を討論し、好評を博しました。

 

その分野で最高のものをつくる

—— 御社は日本で『王羲之王献之書法全集』を出版しておられます。日本人は中国の書道に強い尊崇の念を抱いています。全集の日本での反応はいかがでしたか。

向安全 日本でも長年にわたって王羲之や王献之の書籍が出版されてきましたが、ここまで網羅されたものはありませんでした。文献の大部分が北京の故宮に収蔵されているからです。そのため写真の多くが初公開です。私自身信念としていることがあります。それは、日本で中国関連の書籍を出版するに当たっては、中国文化に関する書籍は必ず同じ分野の書籍から裏付けをとるのがベストだということです。

日本には書道の流派が多く徒弟制度をとっていますが、どの流派であっても、この全集から出典を見つけることができます。『王羲之王献之書法全集』は多くの研究者や大学から購入いただいています。

ただ、欠点を言えと言われれば価格が高いことです。今は日本もあまり景気が良くありませんので、個人で数十万円も出して本を買う人はほとんどいません。今のところ、日本の主要図書館や大学から購入いただいています。多くの研究者が気に入って、二度、三度と宣伝してくださいます。価格が高く発行部数も多くはありませんが、影響力は大きく、このような利益を度外視した逸品図書を出版することは、中国の出版人としての醍醐味であり、この全集は私の出版人生においても特別な存在です。

同様にこの分野では、『中国音楽史図鑑』、『中国鍼灸史図鑑』、『雲岡石窟』(1-20巻)、『中国出土壁画全集』(1-11巻)、『中国文化財図鑑』(1-6巻)『中国無形文化遺産』(1-5巻)などの優れた書籍を出版し、中国の学術出版に新風を巻き起こしました。

 

日本の出版業界の「匠の精神」

—— 今では「匠の精神」という言葉は中国の政府活動報告にも登場するようになりました。日本ではどの業界にも「匠の精神」があります。日本の出版業界の「匠の精神」について教えていただけますか。

向安全 多くのエピソードがあります。10巻からなる『中国出土壁画全集』は、中国と日本で同時に編集出版しました。日本側の翻訳者は古田真一先生です。古田先生は大学教授で、講義もされ、大学院生も担当されている多忙な方です。しかし、原稿が変更になる度に、辛抱強く真剣に翻訳校正に当たってくださいました。挿し絵に至るまで文献資料を調べて、逆さになった鏡像や配置の間違いなども細かく訂正してくださいました。翻訳作業を立派にやり遂げてくださっただけでなく、中国語版の校正作業も主体的に担い、その細心さと真剣さには深く感動しました。

現在我々は葉哲民先生の『中国陶磁史』を編集しています。中国語版はすでに出版されました。日本語版は編集に四年を費やしていますが、まだ出版に至りません。日本側の翻訳者である出川哲朗先生は非常に真面目な方で、手を抜くということがありません。今年の初め、出川先生から写真を40枚ほど差し替えたいとの申し出がありました。原書の写真は質が悪く同様の写真を探したいとのことでしたが、写真を保有している国内の作者は海外出張が多く連絡をとるのが大変でした。やっと差し替えが終わると、葉先生の原書をさらに充実させたいと、再び差し替えの申し出がありました。出川先生は写真の内容をすべて翻訳するだけでなく、すべてを複写し、カットし、サイズ通りに貼り付けを行うスタイルで製本に当たられ、心血を注いでおられる様子でした。出川先生の厳密さは我々も見習わなければなりません。

さらに、『清明上河図』を研究する中国の数名の研究者の共著である『図説清明上河図』は、国内版はB6判なのですが、編集担当の高崎さんから『清明上河図』の細かい部分まで日本の読者に紹介できるように、日本語版はA4判にしてはどうかと提案がありました。A4判の方が日本の読者には馴染み、より多くの情報を提供することができました。

また、『中国絹織物全史―七千年の美と技』は、様々な絹織物を詳しく紹介し厳密に考証したもので、翻訳の難度は非常に高く、出版までに五年かかりました。監修を担当してくださったのは絹織物研究者の小笠原小枝先生です。小笠原先生は研究と資料調査と注釈とを同時に進め、最後には不明瞭な写真があれば探し出して差し替えもされました。また、難解な語句には注釈を付け、日本の慣習に従って100ページもの索引を付けられました。多くの写真は日本のシルクを紹介したものでした。関連の展覧会は毎年一度だけ開催されていますが、正確な翻訳を期するために、彼女は京都博物館にも足を運ばれました。編集の過程では見地の相違で翻訳者と編集者が衝突することもありましたが、当然ながら、すべては良い書籍を作るためです。この出版に費やした五年間は、翻訳者、監訳者、編集担当の間で調整、討論の連続であり、厳格な再創作の道のりでした。

いま述べた先生方以外にも、エピソードはまだまだあります。日本の出版業界の「匠の精神」には感服していますし、大変勉強になります。

 

経済発展には文化の発展が伴わなければならない

—— 現在中国は「一帯一路」戦略を打ち出していますが、出版業界としてどんな貢献ができるとお考えですか。

向安全 「一帯一路」戦略の経済的影響力は地球規模ですが、文化の影響力はより永続的で永久に残るものです。我々が出版した書物も同様に何百年、何千年と伝わり、千年後も文化は語り続けます。経済発展に文化の発展が伴わなければ、「一帯一路」戦略の影響力は限られてくるでしょう。よって、現在、中国政府も、文化産業に携わる企業も「一帯一路」戦略における文化発展支援を強化しています。「一帯一路」という壮大な計画に日本の言語が加わることを願っています。

中国は強大な国になりました。中国の文化もさらに大きく発信されていくべきです。それは我々すべての出版人の努力目標でもあります。昨今の市場を見るに、日本の書籍が中国語に翻訳されたものは多いと感じます。特に暮らし、デザイン、児童、ヘルスケアの分野です。中国の学術書など専門書のレベルは随分高まり、海外の読者にも好評です。しかし、出版市場において、一般読者向けのオリジナル書が少々物足りないように感じます。ですからオリジナル書の作者には一層力を入れていただき、より多くの中国の出版社が海外へ進出し、優れた中国文化がより多く日本に紹介されることを願っています。

 
  情報元:人民日報海外版日本月刊  
 
 
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