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外国人技能実習制度の問題点
カキ産地江田島8人殺傷事件に見る 中国人実習生の悲痛な叫び
4/26/2013 3:04:22 PM  文/蒋豊 張桐
 
 

 

日中両国を震撼させた 江田島殺傷事件

2013年3月14日。広島県の面積100平方キロメートルの小さな江田島は、最高気温11度、サクラのつぼみも開き始め、まさに春を告げていた。この日、江田島にある50社余りの水産加工会社では、早朝5時半からカキを引き揚げ、加工して、午後4時過ぎ、ようやく仕事が終わろうとしていた。

まさにその時、人口わずか2万6437人の江田島の上空に、ヘリコプター5台が現れた。低空を旋回するヘリコプターの爆音で現地の水産加工会社に勤務する数名の中国人技能実習生は空を見上げてぼう然としていた。「いったい何ごとだ」。ヘリの機体にかかれている「警察」、「救急」、「報道」の文字を見て、彼らは大変なことが起きたと感じたという。

中国人技能実習生の通訳を長く務めている中国人男性は、広島県江田島市から呉市に向かって車を運転しているところだった。突然、パトカーが出てきて、赤い警告灯とサイレンを鳴らし、マイクで「すぐに道を空けて下さい」と叫んだ。彼は何かおかしいと感じ、すぐに自宅の妻に電話をかけ「事件が起こったようだ。テレビを見てくれ」と言った。

通訳の男性の妻から「今、テレビに映っている。陳双喜という中国人が会社の日本人社長を殺して、ナイフで何人も傷つけた」とアナウンスしている、という電話が。すぐに「どこの会社」と訊くと、「川口水産」だという。

その様子をテレビのニュースで知った安芸水産加工協同組合の橘隆信理事長は「まさか、あの中国人が人殺しをしたなんて信じられない。人違いであってほしい」と絶句したそうだ。広島物品製作協同組合事務局の加美礼治事務局長も、その事実を知って動揺したひとりだ。「事件が発生した日、私はベトナムにいて技能実習生を採用しているところでした。帰国後、妻は非常に慌てて『江田島で中国人技能実習生が日本人社長を殺した事件があった』と話してくれた。私は本当に驚きました。広島県では今までこんな事件が起きたことはなかったからです」と話す。

警察発表、マスコミ報道によれば、事件の顛末はこうだった。午後4時半ごろ、江田島市の「川口水産」のカキ加工場内で、住込みの中国人技能実習生陳双喜(30歳)が作業所にある自分の部屋から階段を下り、いきなりスコップで川口信行社長(55歳)を殴り殺し、従業員橋下政子さん(68歳)を数10㍍追いかけまわし、背後から頭にかけてスコップを振り下ろし、倒れると包丁で腹を刺した。他、6人の男女従業員が巻添えになりケガをさせられた。さらに、犯行直後には通りかかった軽トラックをスコップをもって襲いフロントガラスを壊したとのことだった。

この凶行に対し、日本のマスコミの反応は概ね以下の通りだった。あるネットメディアの分析によれば ①日本語を話せない中国人技能実習生が孤立していたことが原因とするもの ②実態としては低賃金や出稼ぎ労働の外国人技能実習制度に問題があるとするもの ③経営者の指導に問題があるとするものだった。

事実、日刊「ゲンダイ」(3月18日付)では「いつまで中国10万人を現代の『蟹工船』に乗せておくのか」といった記事が掲載され、産経新聞(3月16日付)では「江田島8人殺傷『もう外国人は雇えない』と生産地の苦悩深まる 支援不備の指摘も」といった報道がなされた。

同様の事件は2006年には千葉県の養豚場で、待遇に不満を持った中国人研修生による刺殺事件が起こった。09年には熊本県のスイカ農家で中国人研修生が経営者夫妻を殺害するという事件が起こった。いずれも低賃金で「奴隷みたいに働かされる」ことに対する実習生の「怒り」が爆発したからだという。2年前の厚生省の調査では監督・指導を受けた受け入れ事業者は2750件に上り、その8割余が法令違反であったという。実習生に時給300~400円しか払われなかった例や強制的に貯金させられたり、通帳、印鑑をとりあげられた例、気に入られなければ解雇し帰国させる「強制帰国」の例、「受け入れ組合の理事長の家事の手伝いをさせられた例など枚挙にいとまがない。劣悪な労働条件と人権無視がこういった監督・指導を受けることになったのだ。こうした事態を招く原因には実習生を低賃金の便利な労働者とみる経営者が多いからではないか。実習生をコスト削減の切り札、「実習」名目の安い労働力、使い捨てと見ているからではないか。こういったことが原因で実習生をめぐる訴訟はすでに全国で30件以上にもなっている。

それでも中国の約20倍といわれる日本の賃金に惹かれて、来日する研修生、実習生は多い。来日前に数年分ともいわれる高額な「保証金」を中国側の送り出し機関に預けている例もある。その保証金のために劣悪の労働条件でもガマンするといったこともあるという。そこに中国人実習生の悲劇が生まれ、失踪といったことが起こるのだ。早急に研修生、実習生の法的保護、ケアに力を入れるべきではないだろうか! 

 

外国人労働力がなければ カキ養殖業はつぶれてしまう

江田島はその昔、海軍兵学校があった、軍国主義の「江田島精神」を培ったところだ。現在、この小さな島は日本のカキの一大生産地となっている。が、労働力不足が深刻となっている。

江田島市役所の市民生活課の資料によると、3月21日現在、かつて3万5000人だった人口は今では2万6437人(2月末)にまで減少している。そのうち65歳以上の高齢者が1万50人で高齢化率38.78%である。これでは島の主要産業であるカキ養殖業は成り立たない。地元の水産業者からは「もし中国人がいなければ、われわれのカキ養殖加工業は全部つぶれてしまう」という悲痛な声もあがっている。

その江田島で、昨年一人の中国人技能実習生がカキの養殖場で行方不明になったことがあるという。この中国人は居眠りをしていて海に落ちたらしいというのだ。その後、現地の水産組合では、漁に出るときはかならず中国人技能実習生をそばに座らせておくようにという通知を出して事件の再発防止につとめている。

また、この島では昨年、ある中国人実習生が島に着いて1週間後に「失踪」した事件も起こったそうだ。結局、この中国人は前々から逃げるつもりだったのか、それとも苛酷な労働条件に絶えられなかったのか、理由は不明だが、とにかく一人の中国人実習生がこの島から消えてしまったのだ。

そして、またこの島で3月14日午後4時半ごろ、中国人実習生陳双喜が8人の日本人を殺傷する凶悪事件が発生した。中国語メディアに携わる者として、われわれは殺人者が中国人であるがゆえに、その真相を明らかにする義務があると感じた。

 陳双喜の本当の職場  環境はどうだったのか

日本のメディアは「広島殺人事件の証人が被害者社長は陳双喜の面倒をよくみていた」とか、「川口社長が今年1月には陳双喜を連れて宮島に観光に行った」「3月14日昼に川口社長は近所の飲食店の女性経営者にコメを10キロ分けてくれと電話し、陳双喜の食事の準備をしていた」「近所の中であの会社が一番中国人の面倒をよくみていた」と報道している。

また3月21日、川口社長の妻によると、川口社長は生前大声で陳双喜を叱っていたが、ただ彼に気を引き締めてほしかったからであり、何回も陳双喜を連れて旅行に行っていたし、また昨年秋には陳双喜を家に招いて食事や酒をふるまった。事件当日の午前10時ごろ、仕事が終わってから川口社長は陳双喜にパンを渡し、彼は涙を溜めてパンを持って自室に戻った、と報じた地元紙「中国新聞」もあった。

しかし、陳双喜と付き合いのあった中国人実習生で水産会社「金波水産」の崔進喜さん、何中さんはまったく違う話しをしている。ある日、陳双喜が終業後に何中さんの部屋に来て、自分の両手を彼に見せた。何中さんはビックリして「どうして手の指がみんな足の親指みたいに腫れてるんだ」と叫んだという。

崔進喜さんは以前、陳双喜に「お前のところの社長はよくしてくれるか? うちの社長はひどいんだ。おれが日本語ができなくて、言ってることがわからないとチョッとのことで『バカ』って怒る。がまんするしかない」と言われたという。ある時、陳双喜は社長があまりにひどいと目に涙をためて話し、恨みに満ちたように「うちの社長は今まで人間として扱ってくれたことはない」と言っていたという。

ある冬の日、崔進喜さんと何中さんが一緒に陳双喜の宿舎に行ってみたところ、陳双喜が毎日電気コタツで寝ているのを目撃したという。コタツには毛布が1枚かかっているだけだった。彼らは陳双喜に「どうしてこんなふうに寝てるんだ。寒いだろう。どうしてエアコンを使わないんだ」と聞いたところ、陳双喜は「使えないんだ。操作を間違えると、社長が怒るから」と答えたという。明らかに陳双喜は緊張した精神状態にあった。

「川口水産」のある人によると、陳双喜はいつもあまりしゃべらず、ちょっと「神経質」な感じだったという。川口社長がコーヒーを渡すと、飲み終わった後両手で捧げるように川口社長に返していた。社長の自宅で食事したときもすすんで飲んだり食べたりすることはなかった。

そんな陳双喜だったが、遼寧省に残してきた自分の母親と6歳の息子のことを話す時だけは、微笑んでいたという。陳双喜の父親はすでに亡く、彼はいつも母親のことを気にかけており、日本で稼いだお金で新しい家を建てるのが夢だった。

事件の約1週間前の3月6日にはふるさとに仕送りをしたばかりだった。陳双喜は息子が生きがいだった、そして自慢だった。「父親がどんなに苦労しても将来息子には苦労させられない。うちの息子はよくできるんだ。テストでダブルの満点をとったんだ。将来は大学に入れてやる」「中国にいる息子のために働いている」と話していた。

川口水産では、陳双喜はただ一人の住込みの中国人だった。異国にあって、ふるさとへの思いは募ったはずだ。陳双喜はほかの中国人実習生のようにパソコンを持っていなかった。いろいろな思いをはきだすことも伝えることもできなかった。しかも仲間の中国人も順番に帰国してしまった。もちろん日本語は不慣れ、ついに職場仲間と打ちとけることができず、昼食はいつも一人で済ませていたという。警察は彼の私物45点を押収したが、その中には彼のノートがあり、日本語の単語で埋まっていたという。

友だちといえば、前出の崔進喜さん、何中さんの2人しかすすんで悩みを訴える相手はいなかった。中国の大連のある派遣会社は、早くから彼を「孤独な人」と見ていた。そんな彼の性格を日本側の受入れ窓口(県内のカキ養殖業者でつくる「日中友好経済協同組合」)から派遣されてくる通訳は見抜けなかった。慣例に従った型通りのケアしかしていなかった。ついに、彼の問題を解決することはできなかった。

 

10万人を超える 中国人実習生の実態

聞くところによれば、陳双喜は毎日「バカ」と叱責され、生活していたそうだ。この言葉に対し、われわれは共同通信の中国語報道の中で「笨蛋」(マヌケ、アホ、バカなどの意)と翻訳されていることに注目した。もちろん、この翻訳は間違ってはいない。しかし、中国の抗日映画・ドラマでは、「バカ」、「バカヤロー」という言葉は音訳され、侵略者の言葉として流布されていることをほとんどの日本人は知らない。

「バカ」、「バカヤロー」は日本語の漢字では「馬鹿」、「馬鹿野郎」と書く。これらは日本語の「口語」であり、語源は中国古代の名著『史記』の「鹿を指して馬という」から来ている。シカもウマも見分けがつかない人は「馬鹿」(バカ)、「馬鹿野郎」(バカヤロー)ということになる。日本人がこの言葉を使うときは相手を激しく批難、侮辱するときであるが、逆に、優しく冗談で親密感を表すこともある。

文字、言語は文化の表現の一つである。しかし、文化の違い、隔たり、衝突によって「負のエネルギー」を付与されると、凝り固まり、解くのが難しい心のわだかまりとなり、屈辱の蓄積となる。

まさにこのためかもしれない、「社長がバカ、バカヤローと罵った」こと、そして「バカ」と言われるたびに、怨念が積み重なり心の中に怒りの火が着いたのではないだろうか。そんな風に思えてならない。その“心の闇”を日本の政府、日本のメディアも解き明かす必要があるのではないか!

陳双喜が働いていた「川口水産」の前に立つと「立ち入り禁止」の黄色いテープの規制線が張り巡らされていた。社内をのぞき込むと「みんな笑顔で明るい楽しい職場」という標語が見える。壁にかかっている出勤表も見えた。所内には電話の受信灯がにぶい光を放っていた。

陳双喜の住んでいた宿舎の外に立つと、まず、宿舎の入り口に置かれた簡易トイレが目に入った。目を転ずると軒下に吊るした彼の2着の仕事着が見えた。春の風にその洗濯物がかすかに揺れていた。まるで何もなかったように。はたして、陳双喜がこの春の風を味わうことができるのはいつの日だろうか。この先6年、あるいは16年間、もしかしたら永遠に息子(家族)には会えないかもしれない。

ところで、技能実習制度は外国人研修生が一定期間の研修を経た上で、その後、正式な雇用関係の下で働きながら技術、技能等を修得することができる制度として1993年に創設された。当時は、日本滞在期間が(実務を伴わない)研修1年及び実習2年の計3年間だった。2010年7月からは「研修」と「技能実習」が制度として分けられ、最長3年間は日本で働けるという「外国人技能実習制度」に改正された。運用するのは(財)国際研修協力機構(JITCO)といい、全国に受け入れ窓口(監理団体)をつくり実習生を受け入れる仕組みとなっている。利用できる業種は現在、農業、漁業、食品製造、繊維・衣服、機械・金属など67職種124作業となっている。

2002年には2万3000人近くの研修生や実習生が来日し、2011年末には14万2000人となり、中国人は10万7000人とふくれ上がった。ほぼ7割が中国人なのだ。過疎地にかぎらず日本中、高齢化と後継者不足、担い手不足で「中国人頼み」になっているからだ。凶行の現場となった江田島でもそうだが、カキの殻を取る「打ち子」の数は激減し、「中国人実習生がいなければ立ち行かない」状態にある。それが実態だ。

そもそも創設時には途上国の外国人に日本の職業技能や知識を身につけてもらおうというのがこの制度の主旨だったはず。それがいつの間にか日本の後継者不足や担い手不足を補う「安い労働力」を調達する制度に変質してしまった。

確かに、この制度は日本の国会において何度か修正されてはいるが、その背景には、今回の江田島事件のように、多くの中国人実習生の血と生命の重い代価がある。

この制度に対しては、国連の人権理事会、女性の地位委員会が何度も調査を行っており、一種の新時代の「奴隷制度」であるとし、直接日本政府に改善を促している。

この際、日本は「外国人技能実習制度」を再度見直し、2度と悲劇が起きないように、抜本的に改革をしていくべきではないだろうか!

 
  情報元:人民日報海外版日本月刊  
 
 
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